カリーナのひとりごと   ( ナツのしくじり騒動でてんやわんや)

 「ハーイ、今日は。カリーナでーす。今日は輔サマに代わって、ウチの妹分ナツ(奈津)のことを中心に喋ろうと思いますねん。

 さて、何を話そうかな?ソウソウ、ナツの恥ずかしいことどもをバクロしてしまいますね。オカンのベッドで、もう十回もオシッコをはずしてしまったんですよ。

 亡くなったクロ先輩は人間の年齢に換算して百才ぐらいになんなんとしてから、はじめてハズすようになったんですけど、妹分のナツはまだ若いんですよ。それなのにハズすなん言語道断ですよ。何かストレスが溜まっていたんでしょうか?

 輔サまは、怒り心頭に発して『アホ、ボケ、マヌケ、スカタン、カス…』と、ありったけの上品な言葉を並べ立てミソクソに罵声を浴びましてん。なんで、失敗してしまうんでしょうね。ウチには理解できまへん。ウチなんか、お上品で礼儀正しくその上賢いので生まれてこの方、一度として失敗した事がありましぇん。殿が決めた、トイレボックスに大・小ともにすましてまっせ。感心でっしゃろう?ウチの行儀の良さに自分ながら涙がこぼれますわ。

  ところで、今ウチは、輔サマのことを指して[殿]と言いましたやろう?輔サマは、これからはマロのことは殿と言え、その代わりオマエのことは姫と呼んでやるからなと、おヌカシ遊ばし、いや仰せになりましてん。なんですか、宮城県大衡村の跡部村長のマネしてるんでっせ。全く困ったもんです。エエ年こいて未だに邪気というか幼な心がぬけないんですね。すぐ悪のりするのが、輔サマ、いや殿の悪いところです。が、これオモロイですね。ウチも、殿を見習って調子を合わそうと…。輔サマと一緒に暮らしていると、バカなところがウチにも移ってくるんですよ。ゴメン遊ばせ。

 となると、オカンのことは何て言ったらヨカンべぇ。さしづめ、ゴリョンサン(御料人様または御寮人様の略)かな?けど、うっとこのオカン、そんな柄よかー、と言いたいですね。これ、内緒の声ですよ。ゆめゆめ、告げ口せんといておくなはれ。

 ウチら二匹、それにウチの御母上も[蝶よ、花よ]と大事に育てられ、とりわけゴリョンサンはナツにメロメロですねん。[可愛いね]を連発し抱き上げて?ずりしているぐらいですねん。ウチに言わせると、そこまでしなくてもエエのにと思ってしまいます。

 そんなにしてまで猫可愛がりにしてもろてて何で失敗するねん?大のときはきちんと決まったところにするのにね。烈火のごとくトサカを逆立てた殿は、頭の先から尻尾の先まで叩きまくりました。これは、ちょっと大袈裟かな?とにかく殿は、お仕置きを致しました。ナツも、自分が仕出かしたことがどういうことか分かったかして、暫くの間、外出して帰って来ませんでした。ほとぼりがすむ頃合いを見計らってケロリとした表情で帰宅するんでっせ。こんなことを数回繰り返したんで、これではたまらないと、オトン・オカンは防御策に大わらわ。オトンは百円ショップで、アルミ仕様のシートを買ってきたのをオカンは、シーツと布団とのあいだにサンドイッチみたいに挟みこみました。これが、毎日の日課となりました。ご苦労なこった。それでもナツの尻くせの悪いのは治りましぇん。アルミ材のシーツは水分を通しませんから、ぽっかりと水たまり、いや尿たまりが出来ました。発見した殿は、お漏らし防止シーツで吸い取る始末。殿のすることではありまへんが、仕方がありません。可哀そうな殿さま!被害はからくもシーツだけですみましたので、姫は早速洗濯機へ。姫のすることではありまへんね。もっとも、昔の姫は、自分の始末もお付きの端女にさせたそうですから、猫の不始末の始末ぐらいは当り前かも知れませんね。

 そこで、オトン・オカンの会話

 「ナツはオトン・オカンがボケないようにって気を遣って、したくもないのに無理にしくじって、対策を考えさせて身体を動かす用事を作ってくれてんねんやでぇ。有り難く思わなんアカンのや。」

 「ホンマ!これでは、ボケる暇なんかないわ。用事をつくってくれて有り難うサン!あり難くて涙が出そう。この間も妹にあったとき、ナツの失敗を話して、きつく叱ったことを話したら、叱ったりしたらアカン言われたんよ。叱らないで悪いクセを直せる方法があるのか知らん?そのくせ自分とこのお犬サマがしくじったときは、やはり怒ってるけどね」


  人間って動物は矛盾の塊なんや。

 話を元に戻すとして、それから数回、合せてナツのしくじりは十回に及びました。なんで失敗するのか、よく観察してみると、どうやら寒い日に限ってやらかすようです。多分、これはウチの憶測ですが、寒いと、ついボックスまで足を運ぶのが億劫で、横着をしてしまうらしいんですね。というのは、ナツのしくじりも暖かくなってからピタリととまりましたからね。ヤレヤレ。

  閑話休題。ナツをめぐる話題はまだまだあります。暖かくなったのでウチも夕方には散歩って洒落たくなります。時には夜中じゅう遊び惚けて朝帰りすることもありますねん。先日、やっと春らしい気候になって寒暖計の水銀柱も上昇してポカポカ陽気になったんで、一晩中外出して、朝御飯時になって帰還したところ、殿から、この不良娘って叱られました。けど、それほど心配した様子でもありません。これまでも何回か繰り返していて前科何犯になるか分からんほどですから、殿も口で言うほどには心配していないんですよ。ところがですよ、翌日の土曜日ナツは家出をしたんですよ。

 明くる日曜の朝になっても帰還せず、ウチと同様、ポカポカ陽気に釣られて夜の散歩と洒落こんだんやとウチも輔サマも思いこんでいましてん。ナツは輔サマの寝室にある、いつも開け放している押し入れが気に入っていて、叱られた時は尚のこと、暇があれば、そこへ入り込んでのんびりうたた寝を楽しんでいるのが常ですから、例によってそこへ潜り込んでいるものと思い、殿はあまり気にしていなかったんです。呼びかけてもウンともスンとも答えませんし、時々、ゴソゴソいう音が聞こえてくるだけ。猫ってのは、気まぐれ動物ですから、自分が気が向けば返事をしますが、でなければ、無視の一手です。

 翌日の朝になっても姿も形も見せませんし、朝食の時間やというのに顔を出さないんですね。そこで、これはてっきり家出やなと殿もウチも思いました。ゴリョンサンはエラく心配して部屋の中をウロウロ。雄に追っかけられて逃げたんのはエエけど、帰り道が分からなくなったんとチャウやろうか、或いは車にはねられたんではないかなどと心配顔。一方、輔サマは、その日は写遊会の総会と例会がある日(二十七年四月二十六日)であることから、そっちに気を取られてナツのことをあまり心配する様子でもないんです。薄情な輔サマ、と言っては言い過ぎですね。ウチらは結構前科がありますからね。ところが、昼近くになってオカンが衣服をしまおうとして洋服箪笥を開けたところ、頓狂な声をあげてナツが飛び出して来たんですね。押し入れにいたんではなくて、洋服箪笥の中に閉じ込められていたんですね。真相は、家出ではなく監禁やったというわけ。前の晩、洋服箪笥が何かの拍子に開いたため、そのままでは扉の角で頭や腕を打って怪我をしないでもないと輔サマはキッチリと閉めたんですよ。まさかナツが遊び半分ふざけて箪笥の中に入っているなんて思いもしませんからね。それにしても、よくぞ窒息しなかったことや。これがもう一日誰も気がつかなかったら、或いはナツは一巻の終りやったかも知れまへん。クワバラクワバラ。

 もう少しで殺人事件、いや殺猫事件が起こるところでした。ウチのことを愛してくれる輔サマを過失にせよ犯人いや犯猫にしたくはありませんからね。

 ウチにも覚えがありますけど、猫ってのは、口が開いたショッピングバックや引き出しが明け放しになっている箪笥をみると、潜り込んでみたくなるんですね。習性なんでしょうか?ベッドなら、寒いときなんかは尚更、掛け布団を頭と鼻面を器用に使って押し上げ潜り込んで、安眠を貪りたくなるんですよ。ナツはウチ以上にその傾向が強いですねん。今回の監禁事件を教訓に、これからはウチも気をつけることにします。ナツにもよう言い聞かせますから…。そんなわけでナツのしくじり騒動は、一件落着です。ヤレヤレ。


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コメント: 1
  • #1

    My Vandehey (金曜日, 03 2月 2017 07:15)


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